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※こちらの記事は、「月刊プロパティマネジメント2月号」に掲載されたものです

VIEWPOINT 年金向け商品 長期安定志向の底地を投資対象としたファンドを提案

東急リバブル ソリューション事業本部ソリューション第二統括部 アセットマネジメント部長 前島 康夫

低リスクの投資商品を望む国内年金に向けた不動産ファンドを開発


東急リバブルは、日本商業開発およびHCアセットマネジメントとの間で、年金基金等の資金運用ニーズに対応する目的で、互いに情報・ノウハウ等を提供し、底地を投資対象とした不動産私募ファンド「JINUSHIファンド」を組成することについて合意した。日本商業開発がJINUSHIファンドを組成し、東急リバブルが資産運用に係るAM業務を行う。

東急リバブルによると、国内の企業年金基金に対してヒアリングしたところ、「不動産私募ファンドは過度にハイリスク・ハイリターンではないか」という疑問が多く寄せられたという。レバレッジを高く掛けることでハイリターンを得ることは可能だが、デフォルトした時にはエクイティの全てを毀損するリスクが生じてしまう。さらに3~5年程度でリファイナンスリスクが生じる不動産私募ファンドは、国内の年金基金にとってかなり高いハードルの投資になっているようだ。ハイリスク・ハイリターンの投資商品よりも「年利3~5%のリターンでも構わないからリスクの低い商品に投資をしたい」と望む声が多かったという。

この要望に応えて商品化されたのが、JINUSHIファンドである。その投資コンセプトは次のとおり。

  • ●長期にわたり変動リスクの少ない土地(底地)の価値に対して投資を行う。テナント与信だけでなく土地(底地)の価値を優先する。
  • ●「土地(底地)のみへの投資」により、建物を所有する場合に生じる補修・修繕等の再投資のない投資を行う。
  • ●人口が集積した住宅エリアで、住宅地内商業施設運営に適しており、かつ他の商業施設や住宅への転用が可能な土地(底地)を対象として投資を行う。
  • ●景気変動の影響を受けにくい食品スーパー等の生活密着型のテナント等との間で事業用定期借地契約を締結し、安定した長期のキャッシュフローが見込める土地(底地)に限定して投資を行う。
  • ●ファイナンスリスク(特に期間満了時のファイナンスリスク)のないフルエクイティによる投資を行う。
■「JINUSHIファンド」のスキーム図

「従来の不動産私募ファンドには①キャピタルゲイン重視の売却戦略、②収益率を上げるためのハイレバレッジ、③建物を所有することによる投資期間内での修繕や改修等の追加出資、④普通借家契約による空室リスク、といった特徴があった。従来とはまったく違った形の不動産私募ファンドを目指した結果、底地が投資対象としてふさわしいということになった」(アセットマネジメント部長・前島康夫氏)

JINUSHIファンドでは底地のみに投資を行い、テナントと長期の事業用定期借地契約を締結する。建物の建設や保守・修繕はテナントが自己負担で行うので再投資がいらず、地震などの自然災害時による資産価値の下落を抑えながら安定的な収益が長期にわたって見込めるというのがJINUSHIファンドの特徴といえる。


生活利便施設に適し住宅用としても転用可能な立地が狙い


JINUSHIファンドの総額は300億円程度、運用期間は10年で、2012年3月の第1号案件の購入をもってファンド設立とする予定。投資組入期間は3年で、この間に出資を募る。設立後3年間を募集期間として年4回エクイティ資金の募集を行う計画だ。想定パフォーマンスは分配金ベースで年4%を目標とする。

投資対象物件は、食品スーパーやホームセンター、家電量販店、結婚式場等およびこれら用途の複合施設等が長期の事業用定期借地契約を結んでいる底地で、1物件当たり10億~20億円程度を主体とする。

投資対象地域は人口が密集し、人口増加が見込まれる地域で、首都圏、関西圏、その他の人口20万人以上の都市を想定している。購入時のキャップレートは、首都圏4.5%前後、関西圏5.5%前後、その他6%以上を投資基準とし、首都圏を主体としながら各地域のバランスをとることで収益の安定を図っていく考え。

立地イメージとしては、住宅地内の食品スーパーマーケット等の生活利便施設に適した立地とし、生活道路に面した整形地でマンションまたは戸建て住宅用として転用が可能な土地。土地面積は1,000~5,000坪程度を想定しているが、都心部においては500坪程度から検討する。また5,000坪以上の土地でも、立地によってはマンションとの共同開発や複合施設としての検討も可能としている。

テナントについては帝国データバンク評点60点以上を基準とし、テナントとの契約期間が10年以上残存しており、残存解約不可期間が10年以上の事業用定期借地権設定契約が締結された底地が取得対象となる。「リスクヘッジの観点からテナントの顔触れやエリア、物件規模などは多様にしていきたい。もちろん、賃料重視でテナントを決めるのではなく、テナントクレジットを十分に精査したうえで投資していきたい」(前島氏)。

投資物件取得については、短期的には既存物件のなかから選別することになる。すでに流動化されている物件ややむなく土地を所有しているテナント企業のオフバランスニーズに対応した物件を中心に情報収集しており、現在は30~40物件に絞って精査している段階で、3月の組成時には20億~30億円の物件を取得する予定だ。

長期的には、商業デベロッパーである日本商業開発が投資基準にあった案件を開発してファンドに組み入れていく考えだ。「開発案件なら出店契約からリース契約まですべて新規に行うため、既存物件よりも投資コンセプトに適した物件に仕上げることが出来る。将来的には開発案件を中心に成長することを基本方針としている」(前島氏)。

■「JINUSHIファンド」投資対象物件の概要

出口での売却は想定せず継続ファンドを順次設立


J-REIT等への売却を前提とする不動産私募ファンドと異なり、JINUSHIファンドは出口を想定せず、後続ファンドを順次作っていく計画だ。例えば、契約期間満了時にテナントが契約期間の延長を希望した場合は、後続ファンドに移すことも可能な仕組みを考えている。事業用定期借地契約の場合、期間満了時には更地で返還されるために評価がしやすいこと、また後継テナントや住宅等への転用がしやすい物件に絞っていることからこうした戦略が可能になっている。

「インカムゲインを重視しているため、間接コストも相当低く抑えている。『投資家への配当よりも関係プレーヤーの利益を重視したファンドが多いのではないか』という年金基金の不満を解消したかった」(前島氏)。

不動産私募ファンドへの関心が低い国内年金基金に対して、その不満、疑問をひとつひとつ洗い出し、解決策を提示したのがこのJINUSHIファンドである。そのコンセプトが評価され、インパクトのある商品として現在の不動産市場を活性化につなげることができるのか注目される。



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